看護師のパート・非常勤の手取りと「年収の壁」|扶養内で働く目安
更新日 2026-07-06 ・ 編集 てどりナース編集部
子育てや家庭の事情で、常勤からパート・非常勤に切り替えて働く看護師は少なくありません。時給が比較的高い看護師は勤務日数を抑えても収入が伸びやすく、「扶養の範囲で働きたいのに、気づいたら壁を越えそう」という相談がよくあります。ここでは、パート・非常勤看護師の手取りの考え方と、いわゆる「年収の壁」を2026年(令和8年)時点のルールにそって整理します。制度は改正が続いている分野なので、最終的な数字は必ず最新の公的情報で確認してください。
パート・非常勤看護師の手取りの考え方
パート・非常勤の給与は、多くが「時給 × 勤務時間」で決まります。看護師は日勤の時給が高めに設定されやすく、休日や夜勤に入ると割増も付くため、同じ勤務日数でも他職種よりまとまった収入になりがちです。
手取りは、その総支給額から社会保険料(加入している場合)と税金を差し引いた金額です。扶養の範囲内で働いている間は社会保険料の負担が小さく、額面に近い金額が手元に残りますが、後述する「壁」を越えると保険料や税金の負担が生じ、手取りの伸び方が変わります。
「年収の壁」は税金と社会保険で別もの
「年収の壁」とひとくくりに語られますが、中身は大きく2種類に分かれます。
- 税金の壁:本人に所得税・住民税がかかり始める/配偶者や親の扶養(配偶者控除・扶養控除)の対象から外れるライン
- 社会保険の壁:自分で健康保険・厚生年金に加入する必要が出てくる/家族の健康保険の被扶養者から外れるライン
この2つは基準となる金額も、超えたときの影響もまったく別ものです。分けて考えると整理しやすくなります。
税金の壁(住民税・所得税・扶養控除)
税金の壁は、超えても手取りが急に大きく減るわけではなく、増えた収入に対して少しずつ税金がかかっていくイメージです。
- 住民税:おおむね年収110万円前後(お住まいの自治体により103万〜110万円程度)から課税され始めます(令和8年度は給与所得控除の引き上げにより、この非課税ラインも従来より上がっています)。金額は多くの場合それほど大きくありません。
- 本人の所得税:基礎控除・給与所得控除の引き上げにより、所得税がかかり始めるラインは引き上げられてきました。あわせて、配偶者や親の扶養(配偶者控除・扶養控除)の対象となる給与収入の上限も、103万円 → 123万円(令和7年分)→ 136万円(令和8年分)と段階的に見直されています(136万円は令和8・9年分の特例を含む金額です)。ここは改正の影響が大きい部分なので、年分ごとの最新の基準を確認してください。
- 配偶者特別控除:配偶者の給与収入が上限を少し超えても、一定額までは段階的に控除が受けられる仕組みです。収入が増えるほど控除は縮小します。
税金の壁は「超えた瞬間に大損」ではなく、超えた分にゆるやかに税がかかる設計だと理解しておくとよいでしょう。
社会保険の壁(106万円・130万円)
手取りへの影響が大きいのは、むしろ社会保険の壁です。ここを越えて自分で社会保険に加入すると、保険料の本人負担が生じ、手取りが一段下がります。この分野は2026年に大きな見直しが予定されています。
106万円の壁(勤務先で社会保険に加入する基準)
一定の要件(週の所定労働時間や勤務先の従業員数など)を満たすパート・短時間労働者は、勤務先の健康保険・厚生年金に加入します。これまでは「月額賃金8.8万円以上(年収およそ106万円)」という賃金要件が加入の目安のひとつでしたが、この賃金要件は2026年10月に撤廃される予定で、以後は「週20時間以上」などの就労時間を中心に判断される方向です。勤務先の規模による要件も段階的に見直しが進められています。
130万円の壁(家族の扶養から外れる基準)
配偶者や親の健康保険の被扶養者でいられる収入の上限が、一般に年収130万円未満です(19歳以上23歳未満は150万円未満〔被保険者本人の配偶者は対象外〕、60歳以上や障害のある方は180万円未満が目安)。これを超えると被扶養者から外れ、自分で国民健康保険・国民年金、または勤務先の社会保険に加入することになります。
さらに2026年4月からは、この130万円の判定が「労働契約の内容」をもとに行われる方向へ見直され、繁忙期の一時的な残業代などで一時的に超えても、すぐには扶養から外れない扱いが整理されつつあります。判定には労働条件通知書などの提出が求められる場合があります。
扶養内で働くときの「働き損」ゾーン
社会保険の壁を少し超えたところでは、保険料の本人負担が生じるぶん、額面が増えても手取りがいったん下がる区間が生まれることがあります。いわゆる「働き損」ゾーンです。
ただし、社会保険に加入すること自体は損とは限りません。厚生年金に入れば将来の年金が増え、健康保険からは傷病手当金などの保障も受けられます。目先の手取りだけでなく、将来の保障まで含めて考えることが大切です。壁の少し手前で勤務調整をするか、いっそ壁を越えてしっかり働くかは、世帯の状況によって最適解が変わります。
自分の条件で手取りを試算する
看護師は時給が高めで、勤務日数を抑えても壁に届きやすいのが特徴です。まずは「今の時給 × 月の勤務時間」でおおよその月収を出し、そこから年収を見積もって、どの壁に近いかを把握しましょう。
本サイトの手取り計算ツールは常勤(月給制)を前提にした概算ですが、想定する月額を入力すれば、健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税がそれぞれいくら引かれるかの内訳を確認できます。社会保険に加入した場合に手取りがどう変わるかのイメージづくりに役立ててください。扶養や源泉所得税の考え方は扶養人数で手取りはどう変わるか、額面と手取りの差の仕組みは手取りと額面の差もあわせてご覧ください。
なお「年収の壁」は制度改正が続いている分野です。ここで挙げた金額はあくまで目安であり、実際の適用は年度・勤務先・お住まいの自治体によって異なります。最新の要件や自分に当てはまる基準は、勤務先の担当部署や、日本年金機構・全国健康保険協会・国税庁・自治体の窓口、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
関連記事
看護師の扶養人数で手取りはどう変わる?源泉徴収の扶養の数え方
源泉徴収の「扶養親族等の数」の意味を看護師向けに解説。源泉控除対象配偶者と16歳以上の扶養、16歳未満を数えない理由、扶養が増えると毎月の源泉所得税が下がる仕組みを整理します。
更新日 2026-07-05
控除・税金看護師の夜勤手当・残業代は課税対象?手取りが増えにくい理由
看護師の夜勤手当・残業代は原則として所得税・社会保険料の対象です。手当が増えても手取りが同じ割合で増えない理由や深夜割増との関係を、公的資料の考え方にそって概算で解説します。
更新日 2026-07-05
手取りを増やす看護師のボーナスの手取りはなぜ少ない?賞与にかかる保険料と税金
賞与の手取りが額面より少なく感じる理由を看護師向けに解説。健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税が賞与にもかかる仕組みや標準賞与額、月給と別枠で源泉される点を整理します。
更新日 2026-07-05
基礎知識標準報酬月額とは?看護師の保険料が決まる仕組み
標準報酬月額とは何か、健康保険・厚生年金の保険料が「標準報酬月額×料率」で決まる仕組みや等級表、4〜6月で決まる定時決定、残業・夜勤が多いと保険料が上がる理由を看護師向けに解説します。
更新日 2026-07-05